結婚は無理ゲーですか? フランス編多様な家族の形を築いた「成功例」のフランスで増加中 法律婚と事実婚の中間「パックス」とは?:中日新聞Web
中日新聞のコラム記事「結婚は無理ゲーですか?」今回は海外フランスの現状と日本での取り組みについて取り上げていました。
今後の婚活に少しでも参考にして頂けたら有りがたく思います。
多様な家族の形を築いた「成功例」のフランスで増加中法律婚と事実婚の中間「パックス」とは?
2024年12月11日
生涯未婚率が上昇し、少子化が進む日本。このシリーズでは、なかなか相手が見つからない人や、制度の壁で家族として扱われないカップルの思いを紹介してきた。結婚を重視する価値観が根強い日本とは対照的に、多様な家族の形を築いた成功例と言われているのがフランスだ。フランスで暮らすカップルのもとを訪ねると、日本とは異なるパートナー観が見えてきた。一方、それぞれ悩みも抱えていて・・・。5回に分けて報告する。
パリから電車で1時間、百年戦争末期にジャンヌ・ダルクが英国軍から解放したことで知られる街、オルレアン。かわいらしい一軒家で、若いカップルがやんちゃな犬に手を焼きながら、娘に離乳食を食べさせていた。
ともに会社員のレミ・ヴァリさん(30)とメラニ・ジュヴォさん(28)はこの街で、生後10カ月の長女アルバンちゃんと暮らす。
ただ、2人は結婚していない。結婚とほぼ同等の権利が保障されるパートナーシップ制度「PACS(パックス)」を選んだカップルだ。
「PACS」を選択
2015年に大学で出会い、付き合い始めた。6年の交際を経た21年、2人で暮らす家を共同で購入したことをきっかけに、PACSの届け出をすることを決めた。「もし、どちらかが死んでも、PACSを結んでいれば条件はあるが、死亡した側が持つ家の権利が相手に移る。互いを守ることができると考えた」とメラニさんは語る。
なぜ、PACSなのか。フランスでは結婚する場合、式を挙げるのが一般的。でも、メラニさんには抵抗があった。「結婚式は多くの女性にとって憧れかもしれないが、私は違う。費用がかかるし、私は恥ずかしがり屋だから」。式と披露宴に4万ユーロ(日本円で650万円)かけた友人もいるという。レミさんも「その1日のためだけにお金をかける必要はあるのか」と考えた。
PACSの手続きは、市役所でわずか5分。出生証明書や身分証などを提出し、署名するだけだった。所得税も共同申告となり、別々の時よりも安くなった。
良いことばかりではない。結婚とは異なり、パートナーと同じ姓を名乗れない。アルバンちゃんは両親のものを合わせた姓だが、メラニさんが保育園に迎えに行くと、保育士にはレミさんの姓「ヴァリさん」と呼ばれる。逆に対外的にパートナーのことを話すときには、夫や妻ではなく「同居人」という単語を使う。「結婚に比べて2人の関係への評価が低い気がする」とレミさんは語る。
それでも、「簡単に2人の関係を公式なものにでき、とても良い制度」と2人は満足しる。
東京都江戸川区で東京都江戸川区で暮らすマチュー・ゴスランさん(27)と兼田あすかさん(27)もPACSのカップル。2018年、マチューさんは、語学留学のために渡仏したばかりのあすかさんと出会った。
すぐに交際を始め、19年にあすかさんが帰国する際にはマチューさんも来日。あすかさんの実家に同居した。20年11月に2人で再び渡仏することにしたが、コロナ禍で、あすかさんが3カ月以上滞在するために必要なビジタービザ(査証)などの発給が停止された。
2人の関係が公式に認められれば滞在が許される可能性があるため、「証明するにはどうしたらいいか」と考えた。思いついたのが、手続きが簡便なPACSを結び、滞在許可証を取得する方法だった。
国外では効力なし
21年2月にPACSを届け出て、その後、許可証を取得した。「フランスで暮らすための手段として選んだが、今後も一緒に過ごしたいから提案した」とマチューさん。だが、22年12月に再び日本で暮らし始めると、関係性を証明するものが何もないことに気付いた。PACSは一歩、フランスの外に出れば効力を持たない。
ともに会社員として働いているが、マチューさんには日本人の配偶者としてのビザは下りず、就労ビザの取得が必要になる。また、今年5月に保護猫を迎え入れた際、あすかさんはマチューさんとの関係について書類に「内縁の夫」と記入した。婚姻しているカップルに比べて、審査に手間がかかったという。
「何かあったときにマチューを助けられる手段は、日本では結婚しかない」とあすかさん。2人は近い将来、PACSを解消し、結婚するつもりだ。
多様な家族の形を築いた「成功例」のフランスで増加中法律婚と事実婚の中間「パックス」とは?
2024年12月11日
3通りの「あり方」
フランスのカップルのあり方は主に3通りに分けられる。法律に基づく手続きをする「結婚」、公的な手続きをしない事実婚「ユニオン・リーブル」、その中間の「PACS」。財産の相続などで、婚姻した夫婦から生まれた嫡出子とそれ以外のカップルの子(非嫡出子)との権利は平等で、いずれを選択しても子どもに不利益は生じない。
フランスの新規婚姻数とPACSの数50万組
PACSは1999年、異性だけでなく同性カップルも対象に創設された新しい制度だが、2022年には約21万組に達した。婚姻数は約24万組。フランス国立科学研究センターの研究ディレクター、フローランス・マイヨションさん(54)は「数年後には結婚よりPACSの方が多くなるのではないか」と予測する。
導入のきっかけの一つが、1980年代に始まったエイズ(後天性免疫不全症候群)の流行だった。この病気でパートナーを失った同性愛者が、長く暮らしていた家を追い出されるといったケースも。何の権利も擁護されていない状況が問題になった。
一方で70年代以降、フランス国内の婚姻数は半減。女性の社会進出や、結婚を重視するカトリックの求心力低下などにより、90年代には事実婚で同居を続け、そのまま子どもができるケースも多くなった。
こうして、さまざまなカップルに結婚した夫婦と同様の権利を認めようという考え方が広がっていった。2013年には同性婚も法制化。今では新たにPACSを結ぶカップルの95%が異性間だ。
離婚に時間とお金
PACSが選ばれる理由の一つが、手続きの簡易さだ。千件以上の離婚に関わったパリの弁護士クレール・パトルクスさん(43)は、「PACSは市役所などで身分証明書と出生証明書を提出してサインするだけ。結婚は、この婚姻に異議がないかを世間に聞く書類を、市役所に10日以上張り出さなければならない」と話す。
関係を清算する際の手間も対照的だ。PACSは両者もしくは片方が書類を提出するだけ。一方で結婚を解消するには必ず夫婦が1人ずつ弁護士を立てて協議を重ねる。21年に法改正され、双方が同意し、子どもの住む場所や財産分与などについて全て了承すれば最短2週間婚できるようになった。それでも離婚成立までの期間は平均で2年。弁護士費用は大体1万ユー口(日本円で160万円)かかる。クレールさんの担当したケースでは、最長で15年かかったという。
フランスは離婚後も双方が親権を持つ「共同親権」。離婚の際には、子どもが父母の間を行き来する頻度なども決める。離婚のきっかけとなった新しいパートナーと暮らす家に子どもを
行かせたくないといった感情面でトラブルなるケースも。家庭内暴力(DV)などがあにはさらに長期化する。
PACSを選ぶカップルが増えるフランスだが、その関係を解消し、結婚するケースも一定数ある。クレールさんは「PACSを結婚前のステップと位置付けるカップルもいる。PACSでは、遺言がない限りパートナーに相続権が認められないため、年齢を重ねてから結婚に移行することも多い」と指摘する。
形にこだわるのではなく、互いの愛が重要」 事実婚選んだカップルが語るメリットと悩み
2024年12月12日
パリ中心部にあるカフェ。休日の昼下がりにレストラン経営ナトン・パーカーさん(34)が、恋人の団体職員サラ・クリエフさん(31)の頬にキスをした。うれしそうに笑う、サラさん。2人は事実婚を意味する「ユニオン・リーブル」のカップルだ。結婚や、それとほぼ同等の権利が保障されるパートナーシップ制度「PACS(パックス)」ではなく、2人がありのままでいられる自由な環境をあえて選んでいるという。
サラさんが大学生だった2013年、交でイスラエルに渡り、現地の大学に通っていた時にナトンさんに出会った。その後、2人ともパリに戻り、友人としての関係が続いた。ナトンさんはコロナ禍が始まったころに失恋を経験。パリの1度目のロックダウン(都市封鎖)が解除された20年5月に久しぶりにサラさんと再会し、恋人としての関係を始めた。
それから4年半。2人は一緒に暮らす場所を探し始めた。ナトンさんは「結婚やPACSのような社会的な契約は堅苦しいし、したいと思ったことがない。形にこだわるのではなく、お互いの愛が重要」と話す。
サラさんの母はモロッコ出身。モロッコでは結婚式で7回のお色直しがあるといい、いつかは自分も挙式したいと思っていた。昨年の30歳の誕生日に友人を60人以上呼んで盛大な誕生日会を開いた。「結婚式じゃなくてもみんなと気持ちを分かり合え、自分の愛も伝えられる」と感じた。両親が2年前に離婚したこともあり、結婚やPACSといった形式ではなく、大切なのは2人の気持ちだとの思いを強くした。
ユニオン・リーブルでいることに対して、サラさんは「世間からは結婚までの一つのステップに過ぎないと思われ、お互いの気持ちが過小評価されている」と感じる。ナトンさんも「社会や自分の家族に、互いの関係をきちんと説明できない」と語る。
所得税が共同課税になる結婚やPACSに比べて税制面での優遇もない。それでも「財産を自分で管理し、お互いに独立して自分のリズムで生きていける」と、2人は今の関係に満足している。
2人の友人には、子どもができてからもユニオン・リーブルであり続けるカップルもいる。どんなカップルの形を選んでも、子どもに不利益はない。だが、多くのカップルが、家族のプレッシャーなどを理由にPACSや結婚を選ぶ現実もある。2人も最近、子どもができた時の関係について話し合いを始めた。
「親や祖父母の世代は、子どもができる前に結婚するのが当然だった」とナトンさん。「ただ、今の世代は必ずしも順番を守らなくてもいいと考えている。社会的な決まりはそんなに重要じゃない」と力を込める。
互いの好きな点を尋ねると、顔を真っ赤にしながらナトンさんは「賢くて美人。話が合うし、笑い方も好き。一緒に料理するのが楽しい」。サラさんは「誰かを批判したり評価したりしないところ。興味を持っていることが違うからいろんなことを学べるし、私を笑わせてくれる」とほほ笑んだ。
まるで、付き合い始めたばかりのカップルのような2人。結婚について、サラさんは「夫婦が、杖のように結婚というステータスに寄りかかり、互いの関係を維持するために努力しなくなってしまうのではないか」と危ぶむ。「公式な関係でないからこそ、お互いに自分の気持ちや愛を伝えるために努力するでしょ」
パートナーがいないと、人間として不完全?それでも今は1人を満喫 「カップル文化」のフランスで起こる「恋愛離れ」
2024年12月19日
多様なカップルのあり方を選択できるフランスだが、パートナーのいない人にとっては肩身が狭い思いをする場面が多い現実もある。フランスならではの「無理ゲー」とはー。
たばこを一服してから待ち合わせのカフェにやってきたのは、パリ生まれのデザイナー、カミーユ・アスティエさん(32)。全身を黒でまとめたおしゃれなスタイルで、アクセサリー職人としての顔も持つ。一番の悩みは、男性と真剣な交際に発展せず、一緒に暮らした経験が一度もないこと。
カップル文化重荷
フランスでは、カップルで過ごす時間を大切にする「カップル文化」が根付いている。友人の集まりにはパートナーを同伴することが当然とされ、1人でレストランに入ろうとすると変な目で見られることも。好きな仕事をして友人にも恵まれているというカミーユさん。ただ、「カップルじゃないと不完全な人間と見られるような気がする。自分に何か問題があるんじゃないかと思われるのが嫌」と話す。
これまでに3人の男性と交際したが、どの人も別の女性の元へ去っていった。「相手に求めすぎていたのかもしれない」。カミーユさんが求めるのは、それぞれの気持ちや考えを伝え合い、精神的に安定した関係。新たな出会いのために友人と一緒にマッチングアプリでパートナー探しをしたり、カフェやパーティーなど知らない人がいる場所に出向くようにしたりしているが、なかなか見つからない。
「人生にパートナーは必要か」と尋ねると、「はい」と即答した後に「でも・・・」。フランスには「自分に合わない人と付き合うよりは1人でいた方がいい」ということわざがあるという。彼氏は欲しいけれど、今のままでもいいんじゃないかと、気持ちは揺れ動く。
経済的安定を優先
日系企業のパリ支店で働く会社員マーウィン・コルメさん(34)も5年ほど恋人がいない。もし将来を約束するようなパートナーができたら、結婚を選び、神父の前で愛を誓うべきだと思っている。でも今は「金銭的に安定し、自分を人間として確立させること」を優先している。
マーウィンさんは、毎週日曜に必ず教会に行くという敬虔(けいけん)なクリスチャン。パートナーには理性的な人を求めているが、「さらにクリスチャンだったら完璧なシナリオ」と笑う。
これまでの恋人とは常に結婚をゴールに見据えて真剣に向き合ってきたが、27歳のとき8歳下の女性と2年ほど付き合って別れたのが最後。マッチングアプリも試したことはあるが、マッチングして満足してしまい、結局会うこともなく続かないそう。
経済的に安定していなければ家族を養えないという思いから、3、4年前から資産運用や貯金を始めた。「まずは人生設計をして土台をつくり、それがゆくゆくは結婚や子どもにつながっていく」とマーウィンさん。今は「待ち」の状態だという。
親や周囲の人からのプレッシャーはないが、孤独を感じるときもある。「分かり合える人がいたらいい」とこぼす。一方で、交流サイト(SNS) では1人を満喫している様子を投稿する人も多いという。「今は彼女をつくるよりもやることがある」とマーウィンさん。フランスでは、パートナー探しを急がない「恋愛離れ」とも言える現象も起きているようだ。
日本版PACS実現を
2024年12月25日
これまで紹介してきたフランスのカップル事情は、日本の将来のヒントになるのか。結婚と同等の権利を保障するフランス独自のパートナーシップ制度「PACS(パックス)」を参考に「日本版PACS」を国に提案している愛知県。その狙いを探ると、結婚にマイナスイメージを持つ若者たちの人生を切り開く可能性が見えてくる。
非嫡出不利益なし
「日本の結婚に息苦しさを感じるカップルに、結婚以外の選択肢を用意したい」。こう語り始めたのは、日本版PACSを提唱する愛知県の古本伸一郎副知事。「法律婚と事実婚の中間となる制度」を創設し、結婚に抵抗感を抱くカップルと、その子どもの権利を法的に保護しようというアイデアだ。
きっかけは衆院議員だった2018年。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率を急速に回復させた「フランスの奇跡」を学ぼうと、現地に行った。当初は手厚い子育て支援が要因と考えていたが、それ以外にもPACSが広く普及し、生まれてくる赤ちゃんの6割が法律婚以外のカップルによる「非嫡出子」だと知った。
日本の非嫡出子の割合は約2%。父親が認知しない限り、母親の単独親権となる。フランスでは1972年に非嫡出子の権利が保護され、子どもに不利益は生じず、少子化対策の一助になっていた。そのフランスでも近年、出生率は低下。それでも、2023年は1・68と日本(1・20) に比べて高い水準を維持している。
国政引退後の22年、大村秀章知事から副知事就任を打診された際、「愛知県でも、少子化による人口の自然減が、ものづくりを中心に就職で転入する社会増を上回っている。何とかしたい」と伝えた。手や補助金は自治体の財政力によって差が生じる。それより、地方で暮らしたいと思えるよう社会システムを変える必要があるのでは、と考えた。「まだ恵まれた状況にある愛知から提案してはどうか」。日本でもPACSのような制度をつくれないかと提案した。
昨年7月、大村知事が全国知事会議で必要性を訴え、国に対する要望活動を始めた。大村知事を座長に研究会を設置し、現在は26都府県が参加。結婚や子どもの法的保護をめぐる課題について議論が始まった。
二人の選択、 手助け
日本の結婚はフランスと比べて手続き自体は簡単だが、古本副知事は「高いハードルがある」と指摘する。「日本の結婚は、家と家の契約の側面が今も根強い。内閣府の調査では95%は女性が姓を変え、男性の家に嫁ぐ」。愛知県が昨年秋に県内在住の20~40代を対象に実施した意識調査では、独身者のうち「結婚をためらうことがある」と答えたのは男性49・5%、女性61・5%。理由としては「相手の親族との付き合いが煩わしい」が最も多かった。また、女性の22・2%が「生来の姓に愛着があり、姓を変えたくない」、14・5%が「キャリアを維持したいなどを理由に姓を変えたくない」と回答した。
結婚に準じた新たな制度には、「利用したい」が全体の11・6%、「利用するかどうかはわからないが関心はある」が42・6%に上り、合わせると過半数を占める。「伝統的な婚姻は大切にしつつ、それ以外の方法で家族になりたいという二人のために新たな社会システムをつくりたい」少子化対策を目的とした視察がきっかけで提案に至った日本版PACSだが、古本副知事は「出生率の上昇は目的ではない」と語る。今秋もフランスを訪ね、PACSが現地の家族観を変えたことをあらためて実感した。日本では婚姻率の低下と出生率の低下は連動している点を指摘した上で、「提示したいのはパートナーの新しいあり方。あくまでも副産物として出生率が上がれば、地方自治体としてこんなにありがたいことはない」と力を込める。
実現には民法改正が必要で、高いハードルが予想される。ただ、悲観してはいない。「日本では法律婚か事実婚の2択。対等な立場で互いの権利と義務を果たしていく新たなカテゴリーがあったら。結婚以外の選択肢が一つの道しるべとなり、二人が大きな冒険に出る手助けができれば」
クレイン ライフ サポートは?
今回は中日新聞Web記事よりの引用も一部させて頂きました。(新聞を見落としした日が存在した為)
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